雑誌

「ガラスの街」ポール・オースター

『City of Glass』の新訳を柴田元幸が。てなことで買って読みました。「ガラスの街」だとあれですね、何か歌謡曲みたいですね。でも柴田元幸といえば原題直訳ですからね。読みながら、ああオースター初期ってこんな感じだったわあ、と思って甘酸っぱい気持ち…

「オブ・ザ・ベースボール」円城塔

何だかいろいろ経緯があって、文學界新人賞受賞後第1作がJコレになってしまった(書いた順番は逆らしいけど)という、一部で鳴り物入りの円城塔。の文學界新人賞受賞作。目新しさはあるけど、おもしろいのかって言われたら微妙。センスだけで繋いだ文章がち…

文芸誌1月号これが。

今月は群像ですね。阿部和重の新連載が始まり(あの『シンセミア』に続く神町サーガだ!けど10ページにも満たない分量なのは見なかったことにしよう)、保坂和志、蜂飼耳、宮崎誉子などが書いているうえに、創作合評で佐藤友哉「1000の小説とバックベアード…

文芸誌11月号の陣。

新潮文學界すばる群像に加え、文藝冬号の非連載小説を読みました。以下内訳。 新潮11月号 絲山秋子「エスケイプ/アブセント」 佐川光晴「二月」 吉田直美「ポータブル・パレード」文學界11月号 木村紅美「海行き」 村上香住子「黒い鏡」すばる11月号 吉原清…

文芸各誌12月号これが買い。

せっかくなので、読む前にも書いてみようと思います。 新潮12月号は、佐藤友哉の新作「1000の小説とバックベアード」370枚一挙掲載。テンション上がりまくりです。そのほかは、車谷長吉、笙野頼子、中原昌也、という明るい気持ちにはなれなさそうだけど好き…

文芸誌を読みました。

もう11月号が出てるのになんですけど、10月号の感想というか、備忘録です。長いです。 新潮10月号 岡田利規「わたしの場所の複数」 吉村昭「死顔」文學界10月号 車谷長吉「大庄屋のお姫さま」 中原昌也「誰が見ても人でなし」 松嶋ちえ「壺のめぐり」すばる1…

「天つ風 博物館惑星・余話」菅浩江

博物館惑星本編であるところの『永遠の森』はおもしろかった記憶があるのですが、いやー、こんなにぬるい話だったかなあ、と思いました。ムネーモシュネーはほとんど出てこないし。 (SFマガジン 2006年4月号所収)

SFが読みたい!2006年版

国内篇ベスト10のうち既読は5作品。『シャングリ・ラ』『デカルトの密室』はこれから読む予定です。その『シャングリ・ラ』の池上永一インタビューがおもしろい。ベスト20まで広げれば、既読は11作品で、まあこんなものかな、と。それに比べて海外篇ベストは…

STUDIO VOICE 2006年3月号

新潮の矢野編集長のインタビューが読みどころです(極私的に)。メインの00年代小説リスト120冊はちょっとライトノベルが多すぎる(そのわりに少女小説系がぜんぜん入ってない。松井千尋とか入れてもおかしくないんじゃなかろーか)のが気になる。翻訳小説リ…

「おれはミサイル」秋山瑞人

2003年に星雲賞日本短編部門を受賞した作品。京都の方にSFマガジンのコピーを送っていただきました。ありがとうございます。いや、これがもう、素晴らしい……。秋山瑞人に久々に触れたせいもあるかもなのですが、泣きそうになってしまいました。戦闘機とミサ…

「いい子は家で」青木淳悟

冒頭部分を読むと、恋人になった女性との関係が描かれるのかと思い、しかしもう少し読むと、主人公が無職で実家暮らしであることが判明しそのへんから攻めていくのかと思い、さらに読むと、母親にスニーカーを洗われたりしているのでマザコンかと思い、さら…

「少女七竈と七人の可愛そうな大人 第1話〜第3話」桜庭一樹

最新号一歩手前まで読みました。第2話以降登場する犬は文中ではシェパードと書いてあるのに、第2話の扉絵でははっきりとラブラドール・レトリバーなのがものすごく気になります。別に大した意味はないんだろうけど、シェパードとラブラドールはぜんぜん違う…

「ザ・パインハウス・デッド」舞城王太郎

終わってねー!!ディスコ探偵水曜日第2部はディスコ探偵が西暁に行ってパインハウスで館モノ、うわーわけわかんねえ、でも奈津川家サーガのノリが戻ってきたかも、というか講談社講談社連呼して掲載誌を間違えたのではないかと思うほどでしたが、きたよこれ…

「SPEEDBOY!」舞城王太郎

おもしろかったけど、正直よくわかんない。マッハで走れる!とかの小学生男子的な部分を楽しんでたら白い玉とか出てきて楠夏がその中にいて、ん?んん?と思ってるうちに終わってしまった。乗り切れなかった理由はいろいろありますが、新しい長編を読んだら…

「一般の魔力」町田康

うわこれちょっと。町田康がこういうもの書くとは思わなかった。まったく想像力のない、想像力のないことに気づくことさえできない人間を描いた短編。ほんとに怖い。むちゃくちゃ怖い。怖すぎる。もうだめだ。 (新潮 2006年1月号所収)

「もえない 第1回」森博嗣

燃えないなのか萌えないなのかまあどっちもなんだろうけど、それはさておき森博嗣が書く青春文学らしい。男子高校生が主人公で(ささきすばるの扉絵では主人公らしき人物が学ランを着ているので叙述トリックは仕掛けられていないものとみなします)、クラス…

「憂い男」「愛らしき目もと口は緑」「レディ」佐藤友哉

サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』をオマージュした作品もこれで8作になり、残る1作は単行本に書き下ろしという形になるに決まっていて、お前は計算ずくなのか?ん?と言いたくなるような、いたいけな読者から金をむしりとるようなやり口は相変わらず…

「大きな熊が来る前に、おやすみ。」島本理生

着実にうまくなっている感じはあるし、なかなかおもしろく読めたんだけど、だけど、最後の最後で激しく萎える一文があって、それは書いちゃだめー!と思いました。大きな熊の持つ意味が反転するところがかなり良かっただけに、その一文で結構がっくりきた。…

「国防レンアイ」有川浩

有川浩はほんとにツンデレが好きだなー。今までの作品から怪獣を抜いただけの話でした。 (野性時代 2006年1月号所収)

「スイート・ダイアリーズ」須賀しのぶ

こちらは「大人向け」を意識して書かれてます。不定期連載の第1回目、なのか?何となく『OUT』っぽいかな。30代女性が人を殺したり何だり。現代ものなので、物語を動かすよりも心情を動かすほうに力点がおかれていて、今後の展開が楽しみですが次がいつ載る…

「三月の5日間」岡田利規

戦争が始まったのとほとんど同じに渋谷のラブホテルに入って5日間やった、という話。筋とは違う意味での「流れ」があって、それに乗ってすらすらと読めます。演劇の人が書く言葉は発音されることを前提にしてるのかな、とかふつうの感想しか浮かんできません…

「ぜつぼう」本谷有希子

ぜつぼう。ぜつぼう。絶望でさえ、ぜつぼう、とつぶやいてしまうような安っぽさにいろどられた「終わったお笑い芸人」の話。不条理な状況に対してなされる的確なツッコミがおもしろい。ぜつぼうって滑稽なものだよね、というだめ人間小説でした。 この間、劇…

「窓に吹く風」乙一

「『暗いところで待ち合わせ』と同じくらいおもしろかったですよ」と言われたので読みました。うん、おもしろかった。白乙一だった。主人公が女の子のせいか、ネガティヴとポジティヴのバランスがとれていて非常に読みやすい。個人的にはもっと心の澱を溜め…

「全世界のデボラ」平山瑞穂

SFマガジンに載っているけれども、僕にはこれがSFだという感じはほとんどしなくて、いや別にSFじゃないからどうとか言うつもりはないですし、何故SFだという感じがしなかったのか、ということについて考えるつもりもありませんが、後半の展開にその鍵がある…

「うさぎ! 第一話」小沢健二

「大きなお金の塊」の中に棲む「灰色」と沼の原の人たちの戦いのお話のようですが、第一話は「灰色」に動かされる世界を書くところまでで終わっています。 灰色のつくりだす世界では、いつも、最初にすてきなイメージの品物が見せられて、気がつくと、巨大な…

「課長 島雅彦」阿部和重

読みました。4ページの掌編で、これが芥川賞受賞第一作。これが……。中原昌也こそ21世紀の石川啄木なのでしょうね、などといった根拠も中身もない*1言葉しか出てきません。何がまずいってこんなのがおもしろいことがいちばんまずいよ。やだやだ。 (新潮 2005…

「冷たい水の羊」田中慎弥

読みました。第37回新潮新人賞受賞作。選評だけ読んで受賞作は読まないつもりだったんだけど、1972年生まれ工業高校卒業後現在まで無職、というニートの見本のような経歴だったので読んでみました。いじめられている中学生男子が「いじめられていない」と思…

「に異議あり」深堀骨

読みました。いつものように最低に下らなくて意味がない短編。タイトルそのまんまの話。TBCとか乳首の友とか言いたかっただけじゃん!これをすごく楽しく読んでる自分をちょっと疑問に思う。 (S-Fマガジン 2005年11月号所収)

「僕たちのスーパー小説」島本理生+乙一+佐藤友哉(群像9月号)

読みました。 「僕たちのスーパー小説」って、スーパー小説とかあほっぽいこと言ってるの佐藤先生だけじゃないですか。 乙一は珍しくたくさん話してて、結構いいこと言ってる。 島本理生は小説を書くことに関しては天然なんですね。 佐藤先生は盛り上げ係。 …

「零式 後編」中川裕之(SFマガジン9月号所収)

前編と作者の名前が変わってるし……。あの、名前かえたら普通にみんな気がつかないと思います。この号に後編が載ってるということに。えーと、暴走族SFです。レシプロより公爵と魔女の話をもっと読みたかったなあ。きっとエグいんだろうなあ。いいなあ。