『魔導師の月』乾石智子

 正統かつ本格な異世界ファンタジーなので、それが好きな人は問答無用で読んでください。満足感はお約束いたします。
 個人的によいファンタジーというのは、その世界が自分のなかにしっかりと根をおろし、登場人物のキャラクターがはっきりと思い浮かべられる(小説なら、ビジュアルまでも)ものだと思うのですが、その意味でいうと、この長さもやや短く感じられました。もっともっとやりきっちゃってほしいです。

魔道師の月

魔道師の月

『人類は衰退しました 7』田中ロミオ

久しぶりの新刊だー!いつの間にか絵師が変わってるのなんで?アニメの妖精さんのしゃべりかた、タラちゃんっぽくない?
今回は中編がふたつ、けっこうまともなSFしてるのが意外でしたが、何だか妖精さんの出番少なくないですか。もっと妖精さん出してほしかったな。妖精さんに会うために読んでるといっても過言ではないのにだ。

人類は衰退しました 7 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 7 (ガガガ文庫)

『英雄の書』宮部みゆき

 『ソロモンの偽証』が出る前に、未読宮部を読んで期待を高めようコーナー。タイトルから何となくファンタジー系なのかと思ってましたが、新作は現代ミステリーなんですね。宮部は『模倣犯』くらいまではわ読んだはず。ずいぶん昔ですね。ちょうど文庫が出たばかりだったので、『英雄の書』からはじめてみました。
 読み終えてから、新聞連載の小説だったと知り、なるほどと納得しました。生かしきれずにもったいないことになっている設定がたくさん。魅力的なうつわと見た目なのに、肝心のストーリーラインが単調で、この長さでは読まされている感さえあります。物語は嘘であり、嘘は罪である、と断じる序盤の流れはすごく良かったのになあ……。

英雄の書(上) (新潮文庫)

英雄の書(上) (新潮文庫)

英雄の書(下) (新潮文庫)

英雄の書(下) (新潮文庫)

『スリーピング・マーダー』アガサ・クリスティー

 早川書房クリスティー文庫を、1から順番に読んでいます。丸2年をかけて、ポアロミス・マープルの長編46作を読み終えたところなので、けっこうなゆっくりペースですが、ひとつずつ楽しむにはこれくらいがちょうどいいのかも。
 さて、ミス・マープルの最後の長編は『スリーピング・マーダー』。刊行こそ最後ですが、執筆自体はそれよりも30年近く前ということで、後期に書かれた『復讐の女神』などと比べると、ミス・マープルが若い。後期の作品ではポアロミス・マープルも容赦なく年寄り扱いされ、しばしば時代遅れの存在として描写されますが、この作品では、おせっかいな老嬢ではあるけれども、まだそれほど周囲から浮いてはいない様子。ということもあって、事件の真相自体の苦い後味はありつつも、読み心地は実はそれほど重くない。
 ポアロはぜひ順番に読んでいただきたいですが、ミス・マープルはこれから入るのもアリかなと思いました。ちなみに個人的なミス・マープルのベストは『鏡は横にひび割れて』。見事な伏線と人物描写でありました。

2010年に読んだ本

とりあえず大晦日なので……。今年は287冊読みましたようですよ(+これから読む長嶋有『祝福』)。もう少し読みたかったなあという気がしつつも、わりに充実した読書ができた1年だったように思います。ではまず今年良かった小説から。

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

ちょう好み!ツボ直撃!


ピストルズ

ピストルズ

何かこう、読み終わった後に壮大な徒労感というか、ものすごく長いプロローグを読まされた感じでありました。いや、おもしろかったです。


叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

新人離れしたとはこの人のためにある言葉だなあ。今後の活躍がたいへん楽しみ。


寝ても覚めても

寝ても覚めても

何かすごいところに到達している。度肝を抜かれた。


喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)

喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)

森博嗣の最高傑作といっていいと思う。


偽憶

偽憶

マザー』も良かったですが、余韻の深さ(というよりも変なもやもやが残る感)はこっちだったかな。


333のテッペン

333のテッペン

30歳の誕生日&再婚おめでとうございます。末永くお幸せにふたたび。


妻の超然

妻の超然

どつぼ超然』とあわせて、時ならぬ超然ブームの2010年。


難儀しましたが読み終えられてよかった。『逆光』は読めるかどうか……。


英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)

英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)

暗殺のハムレット (ファージング?) (創元推理文庫)

暗殺のハムレット (ファージング?) (創元推理文庫)

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

抜群におもしろかった。


小説以外で好きだったものは以下。皆様よいお年をお迎えください。では。
終電車ならとっくに行ってしまった
ぼく、牧水!  歌人に学ぶ「まろび」の美学 (角川oneテーマ21)
すゞしろ日記
絶叫委員会
夕暮の緑の光 (大人の本棚)

『エデン』近藤史恵

たいへんおもしろい自転車小説だった。ミステリ要素はうすめだが、誰がそんなことを気にするというのだ。

エデン

エデン

『天冥の標 2』小川一水

これが1巻の世界につながるのかー。気合いの入った大風呂敷だなあ。最後まで楽しみに付き合いたいと思う。

天冥の標 2 救世群 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標 2 救世群 (ハヤカワ文庫JA)