『スリーピング・マーダー』アガサ・クリスティー

 早川書房クリスティー文庫を、1から順番に読んでいます。丸2年をかけて、ポアロミス・マープルの長編46作を読み終えたところなので、けっこうなゆっくりペースですが、ひとつずつ楽しむにはこれくらいがちょうどいいのかも。
 さて、ミス・マープルの最後の長編は『スリーピング・マーダー』。刊行こそ最後ですが、執筆自体はそれよりも30年近く前ということで、後期に書かれた『復讐の女神』などと比べると、ミス・マープルが若い。後期の作品ではポアロミス・マープルも容赦なく年寄り扱いされ、しばしば時代遅れの存在として描写されますが、この作品では、おせっかいな老嬢ではあるけれども、まだそれほど周囲から浮いてはいない様子。ということもあって、事件の真相自体の苦い後味はありつつも、読み心地は実はそれほど重くない。
 ポアロはぜひ順番に読んでいただきたいですが、ミス・マープルはこれから入るのもアリかなと思いました。ちなみに個人的なミス・マープルのベストは『鏡は横にひび割れて』。見事な伏線と人物描写でありました。