「ぜつぼう」本谷有希子

ぜつぼう。ぜつぼう。絶望でさえ、ぜつぼう、とつぶやいてしまうような安っぽさにいろどられた「終わったお笑い芸人」の話。不条理な状況に対してなされる的確なツッコミがおもしろい。ぜつぼうって滑稽なものだよね、というだめ人間小説でした。
この間、劇団、本谷有希子の『無理矢理』を観に行ったときも感じたことですが、この人の書くキャラクターはどうにもならない自分とどうにもならないのにプライドを保とうとする卑しさを持っていて、そこが魅力なのかなあ、と。ラストも、ギリギリで救いになるかどうか……微妙、というところに落ちていて、本谷有希子が今後どんな作品を発表していくのか楽しみです。
(群像 2005年11月号所収)