「もえない 第1回」森博嗣

燃えないなのか萌えないなのかまあどっちもなんだろうけど、それはさておき森博嗣が書く青春文学らしい。男子高校生が主人公で(ささきすばるの扉絵では主人公らしき人物が学ランを着ているので叙述トリックは仕掛けられていないものとみなします)、クラスメイトが死んで、謎めいた手紙と栞が出てきて、というわりとふつうの青春ミステリっぽい始まりから何を仕掛けてくるのかあるいは何も仕掛けてこないのか。「死ぬというのは、宇宙の原則から見れば安定した形なのだ」なんつって、ファンが喜びそうな文章をきちんと入れてるあたり、抜かりなし!て感じです。あと、最初の引用文が吉本ばななの『ハネムーン』からとられているのにちょっと驚きました。森せんせいも読むんですね。
野性時代 2006年1月号所収)