2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『タイタンの妖女』カート・ヴォネガット

「『タイタンの妖女』占い」だと、僕はサロです。これは不合理なものに翻弄される人々を描いた作品だと、僕は思うのですけれど、その不合理さを受け入れたら僕はきっと別のものまで手放してしまうから、おもしろかった、でもこれで良いとは思わない、と言う…

『ラブシーンの言葉』荒川洋治

荒川洋治が官能小説やらその周辺やらを淡々と読む、外で開くのはちょっとためらわれる1冊。どんなふうに書かれようとも、結局のところ行為はひとつなわけで、隘路からすくいだされた言葉は、真剣で、それゆえに滑稽だ。ラブシーンの言葉作者: 荒川洋治出版社…

『夕子ちゃんの近道』長嶋有

古道具屋が舞台、ってことで若干自伝的なものを予想していたのですが、そうでもなく。むしろ古道具屋っぽさは薄めてあるかもしれない。読んでいて心地がいい小説。夕子ちゃんの近道作者: 長嶋有出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/04/27メディア: 単行本 …

『爆笑問題の「文学のススメ」』爆笑問題

文学のススメという番組があって云々、しかしこの本のいちばんおもしろいところは、爆笑問題と児玉清の対談ですよ。穏やかかつ的確に話を引き出していく児玉清の話術に魅せられました。爆笑問題の「文学のススメ」 (新潮文庫)作者: 爆笑問題出版社/メーカー:…

『の仕事』仲俣暁生

恩田陸が自分のことを「眼高手低」と言っていて、どれだけ目が肥えてるんだこの人は、と思いました。と同時に、なるほどねえ、とも思いました。“ことば”の仕事作者: 仲俣暁生,大野純一出版社/メーカー: 原書房発売日: 2006/05/01メディア: 単行本購入: 1人 …

『古道具ニコニコ堂です』長嶋康郎

古道具屋を始めてしまうような「濃さ」を持った人が何となく苦手なのだが、文章のすきまから出てくるその「濃さ」にちらりと触れるのは楽しい。いわゆる美しさや自然体を意識したような感じではなくて、もっとクネクネした印象。やっぱり実際には会いたくな…

『猫島ハウスの騒動』若竹七海

若竹七海久々の新刊は葉崎もの、の番外編?江ノ島みたいな猫島を舞台に人や猫やが入り乱れること島の如し。ねこねこねこ。夏にぴったりのさくっと読めるミステリでした。猫島ハウスの騒動 (カッパ・ノベルス)作者: 若竹七海出版社/メーカー: 光文社発売日: 2…

『歌うダイアモンド』ヘレン・マクロイ

ミステリの短編集だと思って読み始めたら、SFもあった。ミステリとしてオチをつけているものより、SFといえばSFみたいなちょっと不思議なやつのほうが好みかな。世界の終わりをシンプルに描いた「風のない場所」は、そのシンプルさゆえに胸を打つ。異文化コ…

『首』横溝正史

道具立ては猟奇なんだけど、書き方があっさりしてるのが勝因なのかなあ、何かの。首 (角川文庫)作者: 横溝正史出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 1976/10/29メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (18件)…

『本棚探偵の冒険』喜国雅彦

古本系の人の文章を読むたびに、この道にだけは落ちるまいと固く決意するのであります。すごく楽しそうだけど、下手したら買う時間のほうが読む時間より長いですよこういう人たちは。ああでも、僕も「読むためではない」本を買ったことがあるからなあ……、人…

『傾いた世界』筒井康隆

そろそろ筒井の長編に挑戦する頃合かと思う。傾いた世界 自選ドタバタ傑作集2 (新潮文庫)作者: 筒井康隆出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/10/30メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 112回この商品を含むブログ (24件) を見る

『アイの物語』山本弘

物語の力、について。ひとつひとつの話はありきたりな感じもするのだけれど、それが最後にまとめられていくのが感動的。懐疑的になりつつも感動的。アイの物語作者: 山本弘,李夏紀出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2006/05/31メディア: 単行本購入: 9人 ク…

7月のまとめ。

25冊27冊。今月は読んだ本より買った本が多かったです。おそろしい子。8月は「無闇に図書館で本を借りない」を標語にがんばります。夏らしい本を読みたい、とか考えずに、目の前にある本をただ読みます。あとまじめに感想を書きます。

『流血女神伝 喪の女王4』須賀しのぶ

相変わらず、これだけのページ数に波乱万丈な展開がこれでもかとてんこ盛りで、ああカリエどうなっちゃうのかしら……、とやきもきするシリーズであります。喪の女王 4 流血女神伝 (流血女神伝シリーズ) (コバルト文庫)作者: 須賀しのぶ,船戸明里出版社/メーカ…

『死者の書』ジョナサン・キャロル

ジョナサン・キャロルのデビュー作。亡くなった作家の伝記を書くためにその作家が住んでいた町に行った青年の顛末、なわけですが、こんなことをこんなふうにぺろりと書いてしまうこの人は何なんだろうなあ。すごく変なのに、おもしろくて、どうしてくれよう…

『殺人者の烙印』パトリシア・ハイスミス

僕が買ったの、こんなにポップなカバーじゃなかったんですけど。いや、これは違うだろう、というくらい、延々と続く嫌な緊張感はさすがにハイスミス。登場人物の扱いがあまりにひどいのもさすがにハイスミス。じっとりと手に汗握りたい方におすすめ。殺人者…

『読書癖 3』『読書癖 4』池澤夏樹

地に足がついていながら軽やか。こういう人の本を読む話を読むのは、ある種最上の楽しみであると思う。読書癖〈3〉作者: 池澤夏樹出版社/メーカー: みすず書房発売日: 1997/07メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (5件) を見る読書癖〈4〉作…

『恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。』角田光代

角田さんのエッセイには、人事とは思えない何かがあふれている。良い意味ですごくふつうの人。おそらくその「ふつう感」は、意識して保っているものだと思うのですが。 しかし昨日の三浦しをんとのトークショーで見た本物の角田さんは非常にかわいらしい人で…

『文章探偵』草上仁

カルチャースクールで小説講座の講師をする主人公が、文章探偵となって事件を推理するミステリ。たぶん。誤字脱字誤変換あるいは変換の癖から書き手を推理するのはよろしいんですが、いくらなんでも推理する材料となる文章に誤字脱字が多すぎる。10行くらい…

『シートン探偵動物記』柳広司

えらく軽いほうの柳広司。作者にとっても読者にとっても息抜き的な作品で、さくさく読めるので、悪くはないかな。狼王ロボ、そういえば子供の頃に読んだなあ、と思い出しました。ロボの行動が「人間的にかっこよすぎ」で、あまり好きになれなかった記憶があ…

『鴨川ホルモー』万城目学

第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。ボイルドエッグズらしいっちゃらしいのだが、京都、モテない(わけではないのかもしれないが片思いをしている)男子学生、魑魅魍魎、の道具立てが、どーしても森見登美彦を思い出させるのがもったいない。いやあ、もった…

『三四郎はそれから門を出た』三浦しをん

私にとっちゃあ、読書はもはや「趣味」なんて次元で語れるもんじゃないんだ。持てる時間と金の大半を注ぎ込んで挑む、「おまえ(本)と俺との愛の真剣一本勝負」なんだよ! これを読んだとき、我が意を得たりとはこのことだな、としみじみしました。もはや愛…

『小説の読み書き』佐藤正午

佐藤正午が文豪の小説を小説家の視線で読み、その書かれ方を探る本。ひとつひとつにさかれるページ数は多くないものの、その分焦点が決まっているので、ぱきぱき読むことができます。佐藤正午の独特の誠実さを持った文章と、本を読む本が好きな自分にとって…

『首鳴り姫』岡崎祥久

初めての恋をして、それを全うするまでの、静かな物語。恋愛しても、泣いたりわめいたりするわけじゃないけれど、確かにこころのなかでは嵐が吹き荒れ、生活は翻弄され、枯葉のように舞い踊り空を飛び、終わりを予感している。主人公ふたりの潔癖さと不器用…

『音速平和』水無田気流

第11回中原中也賞受賞作。詩を読むのは久しぶり。現代詩の詩集を読むのはもしかして初めてかも。行きつ戻りつして読みながら、ああ詩の言葉は音とかたちなのだ、と思った。いや、すべての言葉は音とかたちなのだけれど。鉱物の放つ光のような言葉。意味より…

『LOVE or LIKE』

『I love you』と同じ、男性作家による恋愛小説アンソロジー。れんあいしょうせつなんて多かれ少なかれ痛々しいものですが、痛々しいよりも最早イタいとしか言いようがない作品の数々に笑うしかありませんというか、これでいいのか君たち……。しかし中田永一…

『読書癖 2』池澤夏樹

恥ずかしながら告白しておくと、わたくし『薔薇の名前』を読んだことがありませんで。小学生の時に映画は見た記憶があるんですが、いかんせん小学生には難しかったので、エロいシーンがあった(あれでモザイクを初めて見たかもよ)ことくらいしか記憶にあり…

『狼と香辛料Ⅱ』支倉凍砂

ごめんほんとは6月中に読んでたんだ……。うまい具合にシリーズものとして生きてきているように思います。外伝的な短編を読んでみたくなるような感じ。狼と香辛料 (2) (電撃文庫)作者: 支倉凍砂,文倉十出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス発…