『ベルカ、吠えないのか』古川日出男

読みました。犬犬犬!軍用犬の系譜とともに語られる20世紀の戦争、という紹介では全然この本のおもしろさは伝えられてなくて、とにかく犬。優秀かつ強靭な犬の美しさを堪能しました。生まれて流れて死んでを繰り返して次々に犬が出てくるんですが、系図など…

『告白』町田康

読みました。しんどかった。考えていることと話すことが一致せず苦悩する熊太郎。それゆえにまわりと馴染めない熊太郎。馴染もうとした結果阿呆なことをやってしまう熊太郎。結果がすぐ出ないとやる気が出ない熊太郎。善人でいたいというせこい考えを見抜か…

『11の物語』パトリシア・ハイスミス

読みました。ずっと読みたかった本なので早川から出てよかった。しかし気持ち悪い!いちばん最初の「かたつむり観察者」を読んで口の中がじゃりじゃりぬめぬめするような不快感に襲われ、「クレイヴァリング教授の新発見」はもうぞわぞわするので読んでられ…

『終わりのクロニクル<7>』川上稔

読みました。ふー。本屋で見た瞬間に笑ってしまうほどの厚さ。京極堂クラスです。すぐに読まなければ手を付けられなくなるのがわかっているので、必死で読みました。半分くらい理解できてないと思いますが、僕にはこの世界設定を全部理解する余裕がありませ…

『海辺のカフカ』村上春樹

再読。『KID A』を延々と聴きながら読んでいたので、how to disappear completelyな気分です。付箋をつけたところが全部大島さんのセリフでした。僕が大島さんに惹かれるのは、混迷を深め自分がどこへ向かっているのかわからない人たちの中で、唯一客観性を…

『ニート』絲山秋子

読みました。「へたれ」という短編が素晴らしい。遠距離恋愛をしている恋人のところに行くために新幹線に乗る主人公を描いた、ただそれだけの話で、ただそれだけの話が何でこんなに切ないのかよくわからなくて、よくわからないけど素晴らしいです。ニート作…

『博士の愛した数式』小川洋子

読みました。あー、これは売れるのわかる、納得。数学の美しさと、心を通い合わせることの素晴らしさを、押し付けがましくなく語っていて好感度高し。しかし、記憶が80分しか持たない云々と言われるとあれとかそれとかを思い出しますが、これはただただ美し…

『リンさんの小さな子』フィリップ・クローデル

読みました。東南アジアの村から難民としてフランスに来たリンさんと、妻を亡くしたばかりのバルクさんの交流が、簡潔な文章で静かにつづられていく作品。言葉も通じないまま心を通わせていくふたりの描写は大変に素晴らしく美しいのですが、途中から読むの…

『終わりのクロニクル6(下)』川上稔

読みました。とりあえず一言。 これはどこのジュブナイルポルノですか? 何か、あー、電撃文庫ってやっていいんだー*1、って。それはともかく上巻よりおもしろかったです。各G、各国UCATを集めての会議の場面だけでも十分におもしろいのに、それに続く決闘が…

『容疑者Xの献身』東野圭吾

読みました。これは素晴らしいですね。探偵ガリレオシリーズ初の長編で、湯川と大学時代の同級生石神が対決するわけですが、湯川の苦悩がどうでもよく思えるほど、石神の非モテっぷりが痛ましい。ひとつめのトリックは序盤で、ふたつめのトリックには中盤で…

『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』高橋源一郎

読みました。まさにグレーテストヒッツというのがふさわしいボリューム。読むのに時間がかかりましたが、これは素晴らしい本です。あるいは、傑作。 タイトルがあらわしているように宮澤賢治の作品をリミックスしたような短編集。雑誌掲載時とは順序を入れ替…

『東京飄然』町田康

読みました。一昨日サイン会に行ったんですよ。生身の町田康は素晴らしくかっこいい人でした。というのはともかく、町田康が東京(近郊)をぶらぶらするだけのエッセイ。上野のくだりにめちゃめちゃ笑った。芸というのはこういうことだ、と思う。東京飄然作…

『四国はどこまで入れ換え可能か』佐藤雅彦

読みました。ウェブで配信されていたものをCD-ROMにしさらに単行本化しさらに文庫化したもの。ほのぼのしたかわいい見た目に騙されてはいけません。「ナイスキャッチ」「狼煙」「身投げ」といった作品に見られるキレのよさこそがこの本のすごいところなので…