2008-01-01から1年間の記事一覧

『好かれようとしない』朝倉かすみ

何の気なしに手に取ったら恋愛小説だったよ!と思ったけど、これは恋愛小説なのでしょうか……?何だか中学生を見ているような気持ちになりました。しかし、自意識が3回転半してベリーダンスを習いに行ってしまうような主人公に共感せざるをえない自分がこわい…

『雷山からの下山』伊井直行

ああおもしろかったなあ、と思うのだけれど、どこがどうおもしろいのかうまく説明できない。おもしろい話だったなあ、じゃなくて、おもしろい小説だったなあ、のほうなので。目を閉じて物をさわっている感覚に近いかもしれない。雷山からの下山作者: 伊井直…

というわけで

更新再開。思うところあって書かずにいたとかではぜんぜんなく、ただひたすらおのれの怠惰ゆえです。本は変わらず読み続けておりますので。何ヶ月分かの記録がないのは痛いな。早くも何を読んだか忘れかけていたりいなかったり。とりあえず、『赤ちゃん教育…

『孕むことば』鴻巣友季子

萌えいづる命というのは、きかん気までが目映く、足りないことばまでが頼もしい。 孕むことば作者: 鴻巣友季子出版社/メーカー: マガジンハウス発売日: 2008/05/22メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 35回この商品を含むブログ (17件) を見る

『三面記事小説』角田光代

角田光代は、馬鹿な人ばかり書くなあ。泥舟に乗っているのに、そのことを見ないようにして、最後には沈んでいってしまう人たちだ。読んでいるとつかまれてずぶずぶと沈んで息苦しい。自分は違う、とは決して言い切れない愚かさに切り込まれると、巧みさに感…

『あぽやん』新野剛志

旅客を無事出発させること、それが旅行会社空港勤務のお仕事。トラブルはいろいろあるけれど僕は元気です、というお仕事小説としてよく出来た作品。押し付けがましくなく、さくさく読めて、明日また仕事がんばろうな、とか思っちゃうのは単純にすぎますが、…

『ダンシング・ヴァニティ』筒井康隆

これはすげーなー。御年73歳とは思えない、「枯れた」などという言葉からはかけ離れた小説。痙攣的に繰り出されるバグったような文章にノックアウトされます。とりあえず開いて2ページ分は読んでみるべき。ダンシング・ヴァニティ作者: 筒井康隆出版社/メー…

『官能的 四つの狂気』鳥飼否宇

『本格的』で登場し、一部に大人気だった変態増田助教授を探偵役にした短編集。ひどい!ひどすぎる!以前にもまして頭の悪い変態ぶりを見せ付ける増田助教授のキャラもさることながら、エピローグの脱力加減もひどい!そんなこと言われてもぜんぜん驚かない…

『いのちのパレード』恩田陸

短編集だと、恩田陸の「オチつけない癖」によるもやもや感が増幅されるかも。それにしても、かたつむりと聞くとパトリシア・ハイスミスを思い出して嫌な気持ちになります。いのちのパレード作者: 恩田陸出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2007/12/14メデ…

『長崎くんの指』東直子

閉園寸前のさびれた遊園地がゆるやかにつなぐ連作短編集。『とりつくしま』はまあまあ、わりといいかな、と思ったけれど、これはファンタジックすぎてついていけなかった。初期川上弘美からえぐみを抜いた感じ。長崎くんの指作者: 東直子出版社/メーカー: マ…

『カソウスキの行方』津村記久子

やっぱり芥川賞候補になった「カソウスキの行方」より、「花婿のハムラビ法典」のほうが出来が良いように思います。だいたい、カソウスキ、って。カソウスキの行方作者: 津村記久子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/02/02メディア: 単行本購入: 1人 クリ…

『妙なる技の乙女たち』小川一水

軌道エレベーターのふもとで生活する、近未来の「働く女子」を描いた連作短編集(最近は30代でも女子というらしいのでご勘弁を)。なんかなあ、おもしろいのですけど、微妙に恋愛をからめるのはやめてほしいなと思ったり。妙なる技の乙女たち作者: 小川一水…

『ジェイン・エア』シャーロット・ブロンテ

初古典新訳文庫。そそられるラインナップではあるのですが、デザインがあんまり好きじゃなくて……。ジェイン・エア自体は、20年ほど前に、NHKでやっていた映画で見た記憶があります。調べてみたら、BBC版っぽいですね。そのときの勝手なイメージから、ロチェ…

なおきしょうをよそうします!

ぜんぶ読んだ!だから!こんな機会でもなけりゃ読むことのなかったであろう警察小説をふたつも読んでしまって大変だった……、おもしろかったけど……。 本命・桜庭一樹『私の男』、対抗・佐々木譲『警官の血』、大穴・古処誠二『敵影』でひとつお願いしたい。読…

『いつか王子駅で』堀江敏幸

堀江敏幸は、とてもよく晴れた日に、近所の川の土手を家族と散歩しているような小説を書くと思う。ほとんど完璧に幸福な世界。ほとんど完璧なのに、ほんの少しだけ憂いがあって、それがこの瞬間を幸福に思う気持ちに拍車をかける世界。素晴らしく、好き、な…

『笑う招き猫』山本幸久

女子お笑い芸人の青春を嫌味なく書いていて(色恋沙汰がぎりぎりまで抑えられているのがよい)、なかなかおもしろかったんです。おもしろかったんですけど、テレビのお笑いに対する目線がちょっともやもやする感じでした。そしてそのもやもやする感じを解説…

『分冊文庫版 魍魎の匣』京極夏彦

映画見るしな、と思って再読したのですが、やっぱり京極堂は時々読むとすごいおもしろいしすごい速く読めるね。驚異的です。シリーズ最高傑作は鉄鼠だ派なので、いちばんとは言わないけれど、魍魎もたいへん楽しかった。あと、今回初めて分冊文庫版を購入し…