『大学受験のための小説講義』石原千秋

これは読んで良かった。センター試験と国公立二次試験で実際に出題された問題を例に、「小説の読み方」を教えてくれる本です。当然「小説の読み方」なんて読者が100人いれば100通り以上あるわけですが、試験では正解を決めなければいけないので読み方も決まっています。その学校空間における小説の読み方が、言われてみればそうなんだけど、という感じでした。なまじ本を読むのに慣れていると、出題文から抽出する物語がそれまでに形作られた「自分らしさ」に沿ったものになってしまい、それが「学校空間」的なものと大きくずれたときに、「本読むの好きなのに現代文で点取れねーよ」ということになるのですね(たいていの子は意識的にしろそうでないにしろずれをうまく調整できていると思いますが)。あとは、「物語と小説の違い」なんかも丁寧に解説しているので、受験生はもちろん、「もしかしてちゃんと『読めて』ないかも」という不安を抱いたことのあるオトナの方にもおすすめです。

大学受験のための小説講義 (ちくま新書)

大学受験のための小説講義 (ちくま新書)