『老いるということ』黒井千次

老年は青年を映し出す鏡です。(中略)いかに老いるかは、老い始めた人にとってより、むしろ若い人々にとって一層深刻な問題なのです。

老いにはまだまだ遠い自分でも、老いることについて考えることはあります。祖父母が老いてゆくのを見、父母が老いに近づいてゆくのを見、そして自分自身も身体的にはとうに成長は止まっているのですから、老いについて考えないほうが不自然だ、とさえ言えるかもしれません。この本では、キケロに始まり、フォースターのエッセイや幸田文の随筆、楢山節考耕治人の小説などを通して、老いるということを様々な角度から考えています。著者が老いつつある自身を率直に見つめる視点を持っているので、ありがちな説教くささはなく、素直に読める文章になっているのではないでしょうか。また、老人ものの作品ガイドとしてもおもしろく読みました。耕治人、10代のときは良さがちっともわからなくて読むのをやめてしまったけど、今なら少しはわかるかもしれない。

老いるということ (講談社現代新書)

老いるということ (講談社現代新書)