『虹とクロエの物語』星野智幸

だからぼくは本を読む。ぼくの言葉を殺すために、本を読む。本の言葉たちにまみれることで、ぼくを抹殺する。そのときのぼくは、悲しいことに島の一部ではない。しかも本を読めば読むほど、言葉は増殖していく。読みやめたら、大軍の逆襲を食らう。

サッカー、吸血鬼、生まれずにいる子供、大人になることというよりもむしろ「今からでも大人になれるか」ということ。まあ変な話ではあって、これは受け付けないひとはぜんぜんだめだと思う。僕自身も半分くらいわかっていればいいだろうな、という感触。今は、好んで島に隔離されているユウジの言葉にうなずくけれど、もっと先になったら、虹子や黒衣のことがもう少しわかるようになるんだろうか。そしていったい胎児って何なんだ。

虹とクロエの物語

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