『ニッポニアニッポン』阿部和重

いくら繁殖期だからとはいえ、いったい何という強欲な、浅ましい家畜どもであろうか! 俺は未だにただの一発もやったことのない、ずぶの童貞だというのに!

読みました。ぷち阿部和重まつり実施中。高校中退、行くあてもなく東京に追放された鴇谷春生が「ニッポニア・ニッポン問題の最終解決」を行うべくいろいろ計画を練る話。まず、東京に行くということをこんなにも鬱に書いているのが興味深い。上京という言葉に見られるある種の達成感はまったくありません。なぜなら、春生は上京なんかしないで地元にいたかったから。地元にいて、本木桜のストーキングを続けたかったから。引用した箇所を読んで気がついたのですが、これは引きこもり小説でも暴力小説でもなく、由緒正しき童貞小説なのですね。と同時にヲタクガジェットもきちんと入っていて*1、この小説は佐藤友哉好きな人はみんな好きなんじゃないか、とかあらぬ妄想をしてしまうほどおもしろかったです。

ニッポニアニッポン (新潮文庫)

ニッポニアニッポン (新潮文庫)

*1:あまりその方面には明るくない(ほんとうですよ)ので、斉藤環の解説を読むまで全然気がつきませんでしたが。