『ラス・マンチャス通信』平山瑞穂

第16回ファンタジーノベル大賞を受賞した作品がついに文庫化!なぜか角川から!というのはまあ大人の事情があるんでしょうが、何はともあれ文庫になって、入手しやすくなったのは素晴らしい。しかし表紙はハードカバー版のほうが好きです。帯には森見登美彦
今回再読して思ったのは、書かないことの巧みさ。信頼できない語り手という手法には、得てして「何かを隠している」においがでてしまうものですが(ジャンル小説、特にミステリにおいてはそれが伏線なので、きちんとにおわせないと意味がないのですが)、この小説では、隠しているというそぶりさえない。実に病的。選考委員が指摘したという「話がぶつ切れる弱点」こそ、肝なんじゃないかと思うのですが。
ああしかし、「ケルベロス行軍」の長編バージョンが読みたいことよ、というかそれでなくてもいいから早川から本が出ないかしら、というのが一ファンの願いであります。

ラス・マンチャス通信 (角川文庫)

ラス・マンチャス通信 (角川文庫)