『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ

おそろしく読者を緊張させる小説。着想自体は珍しいものではないが、主人公キャシーが行きつ戻りつして語っていくヘールシャムでの日々を追う読者は、丁寧に選られた文章の力で、まさに自分がそこにいる生徒であるかのように、ほんとうのことを知りたい、と思うようになる。でも、わたしたちは神ではなく、神の視点を獲得することもできない。だから、決められていることを変えることはできないし、すべてを知ることもできない。
何を書いても、感じたことに近づけない、というか、自分が何を感じたかも判然としないような状態。再読します。

わたしを離さないで

わたしを離さないで