『城』フランツ・カフカ

ところで、言うまでもないことですが、こんなにいろいろな食い違いがあるのは、べつにクラムが魔術を使っているからではなく、しごく当りまえのことなのです。つまり、彼を見た人の、そのときの瞬間的な気分や、興奮の程度や、期待あるいは絶望の無数の度合いなどによって、食い違いが生じるのです。

意味を見出そうとする行為がことごとく徒労に終わる小説。あるいは、それこそが小説。

城 (新潮文庫)

城 (新潮文庫)