『センセイの鞄』川上弘美

失敗した。大人は、人を困惑させる言葉を口にしてはいけない。次の朝に笑ってあいさつしあえなくなるような言葉を、平気で口に出してはいけない。

読了。ああ、何て素晴らしいんだろう。何一つとして謎はなく、結末さえ予測したとおりだったのだけれど、ただ時間がゆるゆると流れ、戻れないところへ行ってしまう、それが美しくて悲しいのです。ツキコさんとセンセイの関係が変化してゆくのを、そうなってほしくない、いやでも……、とか思いながら読んでいました。こんなふうになれるのなら、年をとるのも悪くなさそうです。