2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『影との戦い―ゲド戦記Ⅰ』アーシュラ・K・ル=グウィン

指輪物語は前振りが長すぎて挫折しましたが、ゲド戦記はぽんぽん話が進むのでさっくり読めました。おもしろいねー、これ。影とは云々とかは散々言われていると思うのでスルーしますが、個人的にはこの本のつくり自体に心躍りました。装丁もイラストも地図も…

『贈る物語 Wonder』瀬名秀明編

あえてSFと銘打たず幅広い作品を選んでますが、それだけに散漫な印象もありますね。ここからいろんなものを読んでほしい、ということなんでしょう。第1章「愛の驚き」の作品はどれも素晴らしかったです。贈る物語 WONDER作者: 瀬名秀明出版社/メーカー: 光文…

2月のまとめ。

読了数は29冊。『獄門島』読めなかった……あう。ベストは『夜更けのエントロピー』と『忘れないと誓ったぼくがいた』で。3月は浦賀和宏の新刊が出るようなのでそれと、小島信夫保坂和志の買ってある分、横溝正史は『獄門島』『悪魔が来たりて笛を吹く』『犬神…

『高慢と偏見』ジェイン・オースティン

映画を見たので読んでみたよ。お金持ちではない女性が身を守る手段としては結婚しかないという時代背景において、主人公エリザベスのようなヒロインは受けたんだろうな(特に本を読むような若い女の人には)。登場人物は多いもののキャラが立っているので混…

いつもの内容にほとんどふれない文章では何とはなしにむずむず感があったので、『忘れないと誓ったぼくがいた』の感想を書き足しました。続きを読むをはじめて使ったかもよ。しかも使ってみて気がついたけど、記事に直接リンクするとふつうにぜんぶ表示され…

『虹とクロエの物語』星野智幸

だからぼくは本を読む。ぼくの言葉を殺すために、本を読む。本の言葉たちにまみれることで、ぼくを抹殺する。そのときのぼくは、悲しいことに島の一部ではない。しかも本を読めば読むほど、言葉は増殖していく。読みやめたら、大軍の逆襲を食らう。 サッカー…

『シャングリ・ラ』池上永一

む、むちゃくちゃすぎる……。バリバリとすべてを薙ぎ倒す展開に呆然とするしかないっつーか、ポカーンですよほんとに。何これ。これでいいのか。SFが読みたい!のインタビューで、「直木賞作家養成ギブスがつらかった」などとおっしゃっていましたが、それは…

かなりほしい。

Amazon.co.jpアカデミー作品賞コンプリートセット欲しい! コンプリートセットという名前はちがうとおもうんですけど。(とここまで書いたところでPCの前を離れて、戻ってきたときには自分が何をしようとしていたのかすっかり忘れてそのままボタンをぽちっと…

『贈る物語 Mystery』綾辻行人編

やっぱミステリはいいやね。法月以外はすべて未読だったので(底の浅いミステリ読みですからね……)どれも楽しく読みました。好きなのはWhy?とWhat?であげられている作品かな。連城三紀彦の『夜よ鼠たちのために』欲しいけど、ハルキ文庫版は本屋で見たことな…

『忘れないと誓ったぼくがいた』平山瑞穂

『ラス・マンチャス通信』がどこまでも座りの悪い微妙な嫌さを味わう作品だとしたら、こちらはどこまでもウェルメイドな口当たりの良さを楽しむ作品。そのあまりにあざといやり口に負けまいとしたのですが、半分読んだ時点であっさり降参。フレンチのお店の…

『本陣殺人事件』横溝正史

「本陣殺人事件」って長編だと思ってたよ。ほんとに何も知らない人間ですよね。というわけで「本陣殺人事件」「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」の3作を読みました。少女の手紙でつづられた「車井戸はなぜ軋る」がいちばん好きです。本陣殺人事件 (角川文庫…

『LOVE』古川日出男

野良猫。品川目黒五反田あたりが舞台で、実際の地理に沿って書かれているので知っているとにやにやするかもしれない。それはそれとして、妄想を文体で走らせていくやり方が実に楽しい。楽しい楽しい、で読み終わってしまいました。猫の小説ではなくて、猫の…

『百年の誤読』岡野宏文 豊崎由美

いやー、笑った。げらげら笑った。20世紀のベストセラーを年代別に読んでいろいろ言うだけの本なんですけど、消えていった本の破壊力抜群のバカさに笑い、優れた作品のユーモアに笑い、もうおなかが痛くてたまりません。僕のような名作読み落とし系の人間に…

『死神の精度』伊坂幸太郎

死神が主人公の短編集。伊坂幸太郎のスカした文章が、人間ではないものの語りとぴったり合っていて、これはかなり「うまくいった伊坂」ですね。抑制の効いたゆるさで余韻を残す書き方もうまいなあと思いました。死神の精度作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: …

『夜のパパ』マリア・グリーペ

「あたし、いったん自分にノーといったら、かならずそうするの。あたしのしつけのじゃまをしないでよ。あたし、ちょっとあまやかされてるんだから。」 「そうかい?」 「そうよ」 「だれにあまやかされてるの?」 「あなたよ。あなたはやさしいから。」 夜の…

『フェティッシュ』西澤保彦

ミステリ風味のホラーサスペンス、かな。フェティシズムとは縁がない(単純に実感できない)ので、ふれられると死んでしまう美少年をめぐるこの話に出てくる様々なかたちの執着は、えーと……、という感じだったのですが、さわりたいでもさわれないでもさわっ…

『八本脚の蝶』二階堂奥歯

二階堂奥歯は用法用量を守ってお読みください。 ある種の人にとっては確実に心のやわらかい部分にヒットするであろう、劇薬のような本でした。おそらく僕は誘惑に負けてこれから何度もこの本を開くことになると思う。八本脚の蝶作者: 二階堂奥歯出版社/メー…

『海の仙人』絲山秋子

ゆるい。宝くじで3億円当たったとか、家に「ファンタジー」という名前の神様っぽい人がいるとか、トラウマがあってセックスできないとか、恋人が死んでしまうとか、作り物めいたそれこそファンタジーのような小説なんだけど、その中を流れるゆるい空気が心地…

『からくりアンモラル』森奈津子

いつもの森奈津子のエロSF短編集。好きなシチュエーションが決まってるから、どれも似たような印象になってしまうのは仕方がないことなんでしょうか。作家個人の性向と内容が直結してしまうところが官能小説全体の限界のような気がする。エロ抜きの「いなく…

『文芸漫談 笑うブンガク入門』いとうせいこう×奥泉光+渡部直己

奥泉光がボケでいとうせいこうがツッコミ。奥泉光が楽天的でいとうせいこうが悲観的。渡部直己の脚注はいらね、と思うのですが(いちばん後ろにまとめて邪魔にならないようにしてもらったらよかった)。いとうせいこうが、「ので」が嫌なので書けない、と言…

『ダンス・ダンス・ダンス(下)』村上春樹

おれはむらかみはるきがすきのす!(もう何が何だか)失われたものがどれほど大きくても踊り続けなければいけないし、踊り続けることができないのなら車ごと海に飛び込むしかないのだ。保険はおりるでしょうか?ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)作者…

『夜更けのエントロピー』ダン・シモンズ

ゾンビ。ゾンビと吸血鬼。とかいろいろの、短編集。最初のほうはいまいち乗り切れなかったのですが、「夜更けのエントロピー」を読んで、ああ素晴らしい表題作でもあることだしこれがベストか、と思っていたら、次の「ケリー・ダールを探して」も素晴らしく…

『バースデイ・ストーリーズ』村上春樹編訳

誕生日を書くからといって、「ハッピーバースデイトゥーユー」では話にならないわけで、そういうものを期待して読んではいけません。誕生日には、取り返しのつかないほど大きく損なわれた何か、と目を合わさなければいけないこともある、ということです。13…

『レモネードBOOKS 1』山名沢湖

趣味のない女の子が怖い。この漫画は、本好きの男の子と付き合うことになった女の子がふわふわしてる話で、山名沢湖らしいふわふわ感は楽しい。書痴と本好きの中間くらいの男の子も好ましい。作中に出てくる本はどれもそんな感じの人をくすぐるために選ばれ…

SFが読みたい!2006年版

国内篇ベスト10のうち既読は5作品。『シャングリ・ラ』『デカルトの密室』はこれから読む予定です。その『シャングリ・ラ』の池上永一インタビューがおもしろい。ベスト20まで広げれば、既読は11作品で、まあこんなものかな、と。それに比べて海外篇ベストは…

STUDIO VOICE 2006年3月号

新潮の矢野編集長のインタビューが読みどころです(極私的に)。メインの00年代小説リスト120冊はちょっとライトノベルが多すぎる(そのわりに少女小説系がぜんぜん入ってない。松井千尋とか入れてもおかしくないんじゃなかろーか)のが気になる。翻訳小説リ…

『ダンス・ダンス・ダンス(上)』村上春樹

おれはむらかみはるきがすきだ第3弾(てきとうです)。村上春樹的世界において僕の心をひきつけてやまないものは、なぜか次から次に女性が寄ってくる主人公でも、魅力的な謎めいたヒロインでも、やれやれでもなく、五反田君なのです。あと料理。ダンス・ダン…

『本格推理委員会』日向まさみち

本格であるかどうか以前に、おもしろいかどうかが問題だよなやっぱり。なぜ素直に電撃小説大賞に送らなかったのか。ボイルドエッグからデビューして今後どうするつもりなのか。薄くてぬるい一人称から作者の若さが見えてそんなことばかりが気になってしまう…

『光ってみえるもの、あれは』川上弘美

高校生のときに読みたかったな、と思うような真っ当な青春小説。作中でさりげなくふれられる詩や小説も、高校生のときならすぐに本屋に行って探していただろうと思う。一言で言えば、ありえない、んだけど、そのありえなさが良い。しかしなぜ小説の中の母子…

『赤ちゃんをさがせ』青井夏海

うむ。助産婦(今は助産師ですけど、作中では助産婦になってます)が主人公で、妊娠出産がらみの事件に出会うんですが、どれもこれも無理がありすぎる……。まあでも謎解き部分を抜きにすれば、悪くなかったですよ。松尾由美のバルーン・タウンシリーズをほの…